廣田 誠子

 

この世界はどうやってできているのでしょうか。物質は原子からできています。原子は原子核と電子から、そして、原子核は中性子や陽子から…と見て行くと、最終的にこれ以上は分けられない素材、「素粒子」にたどりつきます。全ての素粒子を探し出し、素粒子同士がどのような力でくっついたり、離れたりしているのか調べ、世界の成り立ち方を突き止めるのが高エネルギー物理学です。素粒子を取り出して調べるには、イオンや原子核、電子にとても高いエネルギーを与え、勢いよく互いをぶつけて壊さなければならないのでこう呼ばれます。

 

この世界はこれまでに見つかった素粒子とその間に働く4 つの力でほぼ説明できます。例えばコップが形を保っていられるのは、コップをつくる原子が「電気の力」で集まっているからです。机の上にコップを置けるのは、机の分子とコップの分子が「電気の力」でお互いに避け合っているから、机が無ければコップが落ちるのは「重力」で地球が引っ張るからです。しかし、原子より小さい世界になると、「強い力」「弱い力」と呼ばれる力が見えてきます。陽子と中性子を束ねて原子核をつくっているのは「強い力」、放射性同位体が放射線を出す裏には「弱い力」が関わっています。

 

しかし、宇宙の始まり方や、素粒子や力が複数ある理由など根本的なことがまだ解明されていません。私たちは素粒子を取り出すための加速器や、空から降る素粒子を捕えるスーパーカミオカンデのような巨大検出器を使って、国内外を問わずたくさんの人と協力しながら、これらの謎に挑んでいます。